聖光【理科】2022-3

問題

「地球は青かった」という言葉にもあるように、地球は水に覆われた星です。水には液体以外にも、固体の氷や水蒸気などの状態があり、温度や圧力によって状態が変化します。これに関して幾つかの実験を行いました。次の図1・2は、ビーカーに水を入れて、水の温度を測定しながら加熱したり冷却したりしたときの、経過時間と測定した水の温度との関係を表しています。それぞれの測定で使った水は同じ重さで、1分間あたりにやりとりした熱の量は同じです。

(1)沸点

(2)図1の①では、100℃を上回っていても液体のまま、水の温度が上がっています。 この現象を「過熱」といいます。この現象をできるだけ起こりにくくする方法として、最も適したものを、次の(ア)〜(エ)の中から1つ選びなさい。
(ア)ビーカーを、傷の全くないものにかえる。
(イ)ビーカーの中にふっとう石を入れてから過熱する。
(ウ)少量の食塩を溶かしてから過熱する。
(エ)水をろ過してから過熱する。

(3)②で過熱していても水の温度が下がるのは(ウ)気体に変化する液体が吸収する熱の量が、加えている熱の量より多いため。(4)融点(5)過冷却(6)50℃の水の中に同じ重さの-10℃の氷を入れ、十分な時間が経ったのち、0℃以上20℃未満の液体の水のみとなる。(7)富士山の山頂の気圧は低く、沸点も低くなる。

(8)図3のようにおもりを両端につけた糸を氷にかけたところ、糸で押された部分の氷が一部融けて、糸が通ったあとは、再び凍りました。糸で押された部分とその他の部分での圧力と融解の温度について説明した文として正しいものをあとの(ア)〜(エ)の中から1つ選びなさい。
(ア)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より高く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が高い。
(イ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より高く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が低い。
(ウ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より低く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が高い。
(エ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より低く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が低い。

情報整理・分析における思考の流れ

様々な現象から共通の原理を追求し、科学の本質に迫っていくこのような問題を入試で問う。素晴らしい問題です。すべての現象には原理があり、原理から考えた時、他の様々な現象を論理的に理解することができます。このような問題があるから、中学入試問題は面白いんです。
予測不能な社会問題は、当然のごとく、暗記力では解決できません。しかも、暗記力なんてコンピューターに勝てるはずもありません。それにもかかわらず、自らが受けてきたか知りませんが、暗記重視の教育を非科学的に正しいと子どもたちに押し付ける大人たちを見ると、子どもたちが本当に不憫でなりません。

難関中学入試問題はもちろん、予測不能な社会の課題解決に向けて、原理なき考えない理科実験が無価値であることは明白です。”考える”人こそ、”興味のない(誰も興味をもたせてくれなかった)ことの暗記”という苦痛がなくとも、あらゆる問題に真摯に向き合うことができるのではないでしょうか。

今回の問題のテーマは「水」。水に関して教科書で学ぶ基本的な事実として、

・融点が0℃ ・沸点が100℃ ・4℃で体積が最も小さくなる(密度最大)・山頂などの低気圧な環境では沸点が下がる ・1gの水が1℃上昇する熱量を1calとする・物質の溶解(例:二酸化炭素は水に溶ける、酢酸は水に永遠に溶ける)・液体(固体)が気体(液体)に状態変化する時、周りから熱を吸収する・液体(気体)が固体(液体)に状態変化する時、周りに熱を放出する

など、このような基本的な事項は受験生はみんな知っています。

しかし、このような問題を自信を持って回答するには、基本的事実を暗記しているかどうかではなく、基本的事実から原理や構造を論理的に考える人生を送っているか、それに付き合ってくれる大人が周りにいるかに関わっているのです。

目の前の子どもにそんな人生を送らせることができるのは、これを読んでいるあなたしかいないのかもしれません。

(2)図1の①では、100℃を上回っていても液体のまま、水の温度が上がっています。 この現象を「過熱」といいます。この現象をできるだけ起こりにくくする方法として、最も適したものを、次の(ア)〜(エ)の中から1つ選びなさい。
(ア)ビーカーを、傷の全くないものにかえる。
(イ)ビーカーの中にふっとう石を入れてから過熱する。
(ウ)少量の食塩を溶かしてから過熱する。
(エ)水をろ過してから過熱する。

リード文に「水には液体以外にも、固体の氷や水蒸気などの状態があり、温度や圧力によって状態が変化します。」とあることから、問題の全容を俯瞰しても圧力がテーマであることがわかります。「加熱が起こる原因が圧力である」というメッセージが読み取れます。

(ウ)食塩水は固体が溶けており、蒸発しづらくなるので、沸点が上昇します。x
(ア)「無傷」、と(エ)「ろか」は水中の障害物をなくす、という同じ方向性を持っているので単答式の問題として不適です💧

ということで答えは(イ)しかし、なぜそうなるのかは、この問題を解いていく中ではわかりません。少ない情報の中で何を考えても妄想になってしまう可能性が残ってしまいます。前提情報が少なく、難易度の高い問題でした。次に行きましょう。

<原理>水は大気圧によって蒸発を抑えられている。(真空中では蒸発してしまう)水は蒸発するときに体積が1700倍に膨張するので、その膨張する力が大気圧より大きくなったときに一気に膨張するはず。しかし、100℃になった場所で、すぐにそれが起こるわけではない。条件が揃っていても、きっかけがないと始まらないことがある。溶質の結晶化も雲・雪の産生も「核」がないと始まらない。水が100℃になっても沸騰できなかったのは、沸騰するきっかけが無かったから。沸騰石の微小な穴の中にある、気体は沸騰のきっかけとなる核となりうる。容器の傷や水中のゴミなども核となりうる。過冷却も同様の論理。

(8)図3のようにおもりを両端につけた糸を氷にかけたところ、糸で押された部分の氷が一部融けて、糸が通ったあとは、再び凍りました。糸で押された部分とその他の部分での圧力と融解の温度について説明した文として正しいものをあとの(ア)〜(エ)の中から1つ選びなさい。
(ア)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より高く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が高い。
(イ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より高く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が低い。
(ウ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より低く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が高い。
(エ)糸で押された部分の圧力はその他の部分の圧力より低く、固体の氷が液体の水に変化する温度は糸で押された部分の方が低い。

(7)までの問題で、状態変化に対する圧力の影響について考えるよう誘導され「大気圧は、水の蒸発や凝結という体積の膨張を抑えるように働く」「状態変化するときに熱の移動が伴う」ということが表現されてきました。

この状態は、糸からかかる圧力によって氷が③の過冷却状態に戻されているということがわかります。(イ)

様々な現象から共通の原理を追求し、科学の本質に迫っていく問題でした。普段から知的好奇心を持ち、原理を追求していくことが当たり前の子にとっては、とても楽しい問題だったことでしょう。私も然り