麻布【理科】2022-4

問題

様々な病気がある中で、人から人へと移る病気を特に感染症といいます。皆さんの経験のある風邪はこの感染症の一つです。2019年の冬に確認された新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、皆さん自身の健康への意識を高めたことでしょう。感染症なることなく、健康を保つにはどうすれば良いのかを考えてみましょう。
それには、まず私たちの体のことを知る必要があります。私たちの体は無数の細胞というものが集まってできています。この細胞はそれぞれ生きていて、様々な役割をもって協力しあっています。すべての生物はこのような細胞からできています。次の(1)〜(3)は、生きている細胞でみられるはたらきをまとめたものです。
(1)呼吸によって生命活動に必要なエネルギー(活動エネルギー)をつくる。
(2)細胞ごとに持っている、親から子へと生命をつないでいく物質(遺伝物質)をもとに、からだのさまざまなばたんぱく質をつくる。
(3)遺伝物質そのものを複製する。
(1)〜(3)の全てのはたらきは、細胞を満たしている水の中で、(2)で自らつくったたんぱく質によって行なわれます。(2)は、(1)で得たエネルギーを利用するため、死んでいる細胞では行えません。また、(3)を行うには、(1)、(2)が必要です。この働きで細胞は増えますが、生きている細胞の一部のみで行われます。

問1(1)〜(3)のうち、生きている細胞のすべてで行われてるはたらきとして適当なものをすべて答えなさい。

私たちの体内に侵入し、悪い影響を及ぼすものを病原体といいます。病原体が体内に侵入し、増えることを感染と言います。この病原体が増えるほど増えるほど、体内の細胞が壊れてしましまいます。その一方で、体は、病原体をやっつけようとする働きを強めます。この働きが強いほど、鼻水や咳、発熱、下痢などの感染症の症状が強くあらわれます。体内の損傷が少なく、病原体をすみやかにやっつけることができた場合、症状が見られないこともあります。

問2 ある病原体による「感染」と、その病原体による「感染症」特有の症状に関する説明として適当なものを次のア〜エからすべて選びなさい。
ア 「感染」すれば、その病原体による症状が必ずあらわれる。
イ 「感染」しなければ、その病原体による症状はあらわれない。
ウ 症状がない人たちと一緒にいても、「感染」することは絶対にない。
エ 症状がある人に近づいても、必ず「感染」するとは限らない。

病原体の多くは細菌やカビといった細胞からできている微生物です。しかし、インフルエンザやはしかなどは、生物とは考えられていないウイルスが病原体です。図1は、球場の立体構造をもつ新型コロナウイルスの断面を簡単にしたものです。この図のように、どのウイルスにもウイルス自身の遺伝物質があり、この遺伝物質を元に作られたウイルス表面たんぱくで包まれた構造をしています。また、ウイルスの内部に水は一切ありません。ウイルス自身は、細胞でみられる(1)〜(3)のはたらきが無いため、単独では増えません。生きた細胞に侵入し、ウイルスの( A )の構造が細胞の表面の構造と合うことが重要です。お互いの構造が合うと、ウイルスは細胞にくっつきます。するとウイルス自身が細胞内に取り込まれるのです。こうして、細胞内に入ったウイルスの( B )は、細胞自身の遺伝物質と同様に利用され、細胞が(2)(3)のはたらきを行った結果、大量のウイルスがつくられるのです。
つまり、ウイルスに侵入された細胞は、ウイルス生産工場(感染細胞)となり、ウイルスがいっぱいになると、感染細胞は壊れて、大量のウイルスを細胞の外に放出するのです。

問3 空欄(A)(B)に入る語句をそれぞれ答えなさい。

問4 感染細胞に関する説明として最も適当なものを次のア〜エから選びなさい。
ア ウイルスに侵入されると、細胞はすぐに死んでしまう。
イ 死んだ細胞にウイルスが侵入しても、感染細胞になる。
ウ 感染細胞が壊れない限り、ウイルスはどんどん作られる。
エ 感染細胞は呼吸しない。

病原体をやっつけようとするはたらきは、疫(病気)を免れるという意味で、免疫といいます。この役割を担っている細胞です。さまざまな役割の免疫細胞が連携し、免疫は次の(4)〜(7)の順に進行します。
(4)病原体の特徴を探る細胞が、病原体表面の形状を読み取る。
(5)読み取った形状を司令塔の役割をする細胞に知らせる。司令塔からのはたらきで、知らされた形状にちょうど合う形のおもりようなもの(抗体)がつくられる。
(6)病原体は、体内に無数にばらまかれた抗体とくっつくと、その場から動けなくなり、体内の異物を食べる細胞たちにやっつけられる。
(7)司令塔となった細胞のいくつかは、体内で生き残る。一度つくった抗体の形を記録しているので、同じ病原体が体内に侵入すると、すぐに抗体をばらまいて、病原体をやっつける。

問5 鼻水や咳といった感染症の主な症状は、病原体を体内から取り除こうとするはたらきによって起きます。これらの症状がやわらいでくるのは、(4)〜(7)のどの段階が始まったころと考えられますか。

問6 抗体は細胞内には入れませんが、細胞の外にある病原体を(4)〜(7)のはたらきですべてやっつけることができます。しかし、ウイルス感染はこれだけでは治りません。その理由を答えなさい。

免疫は常にはたらいています。病原体のはたらきが弱い場合、体内の損傷が小さく、感染症の症状があらわれないうちに病原体はとりのぞかれます。逆に①病原体のはたらきが強い場合、体内の損傷が大きくなり、生命が危険な状態になることもあります。
このことから、健康であり続けるには、②必要以上に多くの病原体を体内に侵入させないことと、③免疫のはたらきを受けもつ生きた細胞たちをできるだけ良い状態に維持することが大切だといえます。

問7 下線部①について、体内の損傷を大きくするような病原体の性質を1つ答えなさい。

問8 下線部②について、病原体がウイルスの場合、生きた細胞にウイルスをくっつけないようにすることが重要だと考えられます。正常な皮ふの表面にある角質層は死んだ細胞でできているので、傷口のない手指にウイルスがいくら付着しても感染することはありません。それにもかかわらず、手洗いや手指のアルコール消毒をしなくてはならない理由を答えなさい。

問9 下線部③について、免疫の細胞も私たちの筋肉と同様に、使わずに休ませすぎると弱ってしまします。また、激しく使いすぎると壊れてしまいます。からだをきたえるため運動するのと同じようなしくみがあるのです。免疫のはたらきを高めるのに良いとされるものを、ア〜キから3つ選びなさい。
ア からだにどんな細菌も入れたくないので、常に消毒したものを利用する。
イ 多少の細菌がからだに入った方が良いので、体調が良い時には外出する。
ウ できるだけ細菌と接触する方が良いので、手洗い、うがいは一切しない。
エ 免疫細胞のはたらきのために、たんぱく質を多くふくむ食事を心がける。
オ 免疫細胞をはたらかせるために、細菌が増えたものを食べるようにする。
カ 免疫細胞をできるだけ休ませるために、一日中、寝て過ごすようにする。
キ 激しい運動によって免疫細胞も疲れるため、運動後はしっかりと休養する。

情報整理・分析における思考の流れ

新型コロナウイルスに関する時事問題です。時事問題ですが問題文にないことは聞いていません。教科は理科ですが、国語の論説文を解いているようです。近年、このようにテーマを絞って、資料や文章を読み込ませ、科学的視点に立って構造や仕組みを問う問題が増えてきています。中途半端な知識が障害になることもあります。試験当日、その場で考えるしかありません。様々な現象や話題について、よく調べ、よく考える生活を送っているかが問われています。麻布中は以前、入試問題で「ドラえもん」を題材にして、生物の定義を問うていました。ウイルスを生物扱いしているかのようなこのコロナ禍において、原理原則を追求する非常に考えさせられる問題でした。生物の定義は、子どもたちは普段あまり考える機会はないですが、自分自身のことでもある素晴らしい題材です。

様々な病気がある中で、人から人へと移る病気を特に感染症といいます。皆さんの経験のある風邪はこの感染症の一つです。2019年の冬に確認された新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、皆さん自身の健康への意識を高めたことでしょう。感染症なることなく、健康を保つにはどうすれば良いのかを考えてみましょう。
それには、まず私たちの体のことを知る必要があります。私たちの体は無数の細胞というものが集まってできています。この細胞はそれぞれ生きていて、様々な役割をもって協力しあっています。すべての生物はこのような細胞からできています。次の(1)〜(3)は、生きている細胞でみられるはたらきをまとめたものです。
(1)呼吸によって生命活動に必要なエネルギー(活動エネルギー)をつくる。
(2)細胞ごとに持っている、親から子へと生命をつないでいく物質(遺伝物質)をもとに、からだのさまざまなばたんぱく質をつくる。
(3)遺伝物質そのものを複製する。
(1)〜(3)の全てのはたらきは、細胞を満たしている水の中で、(2)で自らつくったたんぱく質によって行なわれます。(2)は、(1)で得たエネルギーを利用するため、死んでいる細胞では行えません。また、(3)を行うには、(1)、(2)が必要です。この働きで細胞は増えますが、生きている細胞の一部のみで行われます。

問1(1)〜(3)のうち、生きている細胞のすべてで行われてるはたらきとして適当なものをすべて答えなさい。

(1)(2)

私たちの体内に侵入し、悪い影響を及ぼすものを病原体といいます。病原体が体内に侵入し、増えることを感染と言います。この病原体が増えれば増えるほど、体内の細胞が壊れてしましまいます。その一方で、体は、病原体をやっつけようとする働きを強めます。この働きが強いほど、鼻水や咳、発熱、下痢などの感染症の症状が強くあらわれます。体内の損傷が少なく、病原体をすみやかにやっつけることができた場合、症状が見られないこともあります。

問2 ある病原体による「感染」と、その病原体による「感染症」特有の症状に関する説明として適当なものを次のア〜エからすべて選びなさい。
ア 「感染」すれば、その病原体による症状が必ずあらわれる。
イ 「感染」しなければ、その病原体による症状はあらわれない。
ウ 症状がない人たちと一緒にいても、「感染」することは絶対にない。
エ 症状がある人に近づいても、必ず「感染」するとは限らない。

イ,エ

病原体の多くは細菌やカビといった細胞からできている微生物です。しかし、インフルエンザやはしかなどは、生物とは考えられていないウイルスが病原体です。図1は、球場の立体構造をもつ新型コロナウイルスの断面を簡単にしたものです。この図のように、どのウイルスにもウイルス自身の遺伝物質があり、この遺伝物質を元に作られたウイルス表面たんぱくで包まれた構造をしています。また、ウイルスの内部に水は一切ありません。ウイルス自身は、細胞でみられる(1)〜(3)のはたらきが無いため、単独では増えません。生きた細胞に侵入し、ウイルスの( A )の構造が細胞の表面の構造と合うことが重要です。お互いの構造が合うと、ウイルスは細胞にくっつきます。するとウイルス自身が細胞内に取り込まれるのです。こうして、細胞内に入ったウイルスの( B )は、細胞自身の遺伝物質と同様に利用され、細胞が(2)(3)のはたらきを行った結果、大量のウイルスがつくられるのです。
つまり、ウイルスに侵入された細胞は、ウイルス生産工場(感染細胞)となり、ウイルスがいっぱいになると、感染細胞は壊れて、大量のウイルスを細胞の外に放出するのです。

問3 空欄(A)(B)に入る語句をそれぞれ答えなさい。

A 表面たんぱく質
B 遺伝物質

問4 感染細胞に関する説明として最も適当なものを次のア〜エから選びなさい。
ア ウイルスに侵入されると、細胞はすぐに死んでしまう。
イ 死んだ細胞にウイルスが侵入しても、感染細胞になる。
ウ 感染細胞が壊れない限り、ウイルスはどんどん作られる。
エ 感染細胞は呼吸しない。

病原体をやっつけようとするはたらきは、疫(病気)を免れるという意味で、免疫といいます。この役割を担っている細胞です。さまざまな役割の免疫細胞が連携し、免疫は次の(4)〜(7)の順に進行します。
(4)病原体の特徴を探る細胞が、病原体表面の形状を読み取る。
(5)読み取った形状を司令塔の役割をする細胞に知らせる。司令塔からのはたらきで、知らされた形状にちょうど合う形のおもりようなもの(抗体)がつくられる。
(6)病原体は、体内に無数にばらまかれた抗体とくっつくと、その場から動けなくなり、体内の異物を食べる細胞たちにやっつけられる。
(7)司令塔となった細胞のいくつかは、体内で生き残る。一度つくった抗体の形を記録しているので、同じ病原体が体内に侵入すると、すぐに抗体をばらまいて、病原体をやっつける。

問5 鼻水や咳といった感染症の主な症状は、病原体を体内から取り除こうとするはたらきによって起きます。これらの症状がやわらいでくるのは、(4)〜(7)のどの段階が始まったころと考えられますか。

少しわかりにくい時は、空白部分に関係図を書いて整理しましょう。

(7)

問6 抗体は細胞内には入れませんが、細胞の外にある病原体を(4)〜(7)のはたらきですべてやっつけることができます。しかし、ウイルス感染はこれだけでは治りません。その理由を答えなさい。

抗体はウイルスが細胞内で増えることを止めることはできないから。

免疫は常にはたらいています。病原体のはたらきが弱い場合、体内の損傷が小さく、感染症の症状があらわれないうちに病原体はとりのぞかれます。逆に①病原体のはたらきが強い場合、体内の損傷が大きくなり、生命が危険な状態になることもあります。
このことから、健康であり続けるには、②必要以上に多くの病原体を体内に侵入させないことと、③免疫のはたらきを受けもつ生きた細胞たちをできるだけ良い状態に維持することが大切だといえます。

問7 下線部①について、体内の損傷を大きくするような病原体の性質を1つ答えなさい。

ウイルスがいっぱいになると、感染細胞は壊れて、大量のウイルスを細胞の外に放出する。

問8 下線部②について、病原体がウイルスの場合、生きた細胞にウイルスをくっつけないようにすることが重要だと考えられます。正常な皮ふの表面にある角質層は死んだ細胞でできているので、傷口のない手指にウイルスがいくら付着しても感染することはありません。それにもかかわらず、手洗いや手指のアルコール消毒をしなくてはならない理由を答えなさい。

口や鼻に手指がふれた時に、ウイルスが体内に侵入することがあるから。

問9 下線部③について、免疫の細胞も私たちの筋肉と同様に、使わずに休ませすぎると弱ってしまします。また、激しく使いすぎると壊れてしまいます。からだをきたえるため運動するのと同じようなしくみがあるのです。免疫のはたらきを高めるのに良いとされるものを、ア〜キから3つ選びなさい。
ア からだにどんな細菌も入れたくないので、常に消毒したものを利用する。
イ 多少の細菌がからだに入った方が良いので、体調が良い時には外出する。
ウ できるだけ細菌と接触する方が良いので、手洗い、うがいは一切しない。
エ 免疫細胞のはたらきのために、たんぱく質を多くふくむ食事を心がける。
オ 免疫細胞をはたらかせるために、細菌が増えたものを食べるようにする。
カ 免疫細胞をできるだけ休ませるために、一日中、寝て過ごすようにする。
キ 激しい運動によって免疫細胞も疲れるため、運動後はしっかりと休養する。

イ,エ,キ

<おまけ1>

<おまけ2>

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